ケンタロウBlog

 ケンタロウが日常の中で、見たり聞いたりした事について書いています。

真実と正義と美の象徴

 新潟県立美術館の「庵野秀明特撮博物館」を観てきました。
 特撮に使用された実際の模型やスケッチなどが展示されています。
 私は展示されているほとんどの作品を、リアルタイムでテレビ放送や映画を観る事は出来ませんでしたが、小学生の頃に再放送などでよく観ていたので覚えています。

 他に特撮技術をフルに使って一切CGを使わずに製作された「巨神兵東京に現る」を上映していて、その製作過程なども映像や模型で観る事が出来ます。

 ワンカットの映像を生み出す為に気の遠くなるような緻密な作業が垣間見えます。
 こうした小さな仕事一つ一つの積み重ねがやがて大きな作品となって現れるんですね。

 多くのスタッフの弛まぬ努力と情熱がヒシヒシと伝わってきます。


岡倉天心の言葉で

「美とは創造的精神の永久的な青春の歓喜である。」

というものがあります。
 「自発的な意欲に基づき喜びを感じながら自由に表現出来るのでなければ芸術なんて生まれない。」ということです。

巨神兵東京に現る」のメイキングを観ていると、スタッフの笑い声や驚嘆の声が多く聞かれます。本当にスタッフが楽しんで作っているのが分かります。

 良いものとはこんな風に楽しみながら作られるものだとつくづく思いました。そして、そのように作られたものは何にせよ素晴らしいものが出来ます。


 博物館の中にウルトラマンのコーナーがあり、そこにウルトラマンのデザインなどを担当した成田亨氏が「みやこさろん90年秋号」に寄稿された文章がありました。以下は冒頭の部分です。

” 私は、人間は進化しないものだと思っています。進化しないで変化していくものだと思っています。食を求めるために働き、恋に喜び、失恋に泣き、友と語り、嫌な奴と働き乍ら、一人一人は成長していきますが、人類そのものはメソポタミアの文明開化以来同じことを繰り返しています。
 しかし科学は進歩します。日進月歩、昨日のものは無価値です。科学技術の進歩は生活を変えます。革新的な技術の発達の中で、人間は人間全体の発展進歩だと錯覚して、ボケてゆくのです。堂々として生きる本来の人間の姿を忘れてゆくのです。
 哲学は鳴りをひそめ、宗教も静まり、コンクリートとガラス状の現代建築に追い出された彫刻はディスプレイ化し、絵画はデザイン化して、生存の場を確保しています。”

 人間は、否、生物は変化をし続けなければ生きては行けません。変わらないものは滅びます。しかし、人が元来持っているものは変わりません。
 太古の昔より変わらない素材(DNAとも言える)を色々と組み合わせて変化し続けてゆくのです。
 伝統的な祭事や芸事も本伝は変化させず、運用の仕方や活かし方を変化させることで、時代や文明を超越してきました。

 科学技術が発展して人の暮らしは変わりました。しかし、どんなに人を取り巻く物や生活が変わったとしても、人そのものは変わらないのです。

 変化のないもの、真理とは「真、善、美」と言えるでしょう。中村天風氏によれば宇宙の本源とし、
 真とは誠、善とは愛、美とは調和と表しています。

 美しいと思えるものはこれらの要素が必ず根源にあります。これらの要素のないものは成田氏が懸念する様な芸術のなり損ないになるのでしょう。

デザイン・技術と真理・ 芸術の違いが、物を作る事の要諦であると思います。

 先程の成田亨氏の文章の隣にはウルトラマンの肖像画があります。そのタイトルは「真実と正義と美の化身」です。
 ウルトラマンは純粋無雑な心の能動により、愛をもって調和を醸し出す。そういうものであると私は読み取りました。
 これは我々がやっている武芸の根本原理と合致するものです。

 成田亨氏の先程の文中には「デザイナーが商用デザインするから良いものが生まれない」とありますが、全くその通りだと思います。デザイン一辺倒では良いものは出来ません。

 デザインとは人に歩み寄った問題解決方法で、アートとは人に対する問題提起と私は考えています。

 優れた作品には根本的にデザインされたものかアートかという違いがありますが、特撮においても、よくまとまった物はデザインを作り出そうとして生み出された物でしょう。美しいと思えるものはアートを作り出そうとして生み出されたものでしょう。

芸術は変化のないもの
デザインとは変化するもの
です。

 時代を超越するものには真理が備わっています。ウルトラマンなどの優れた芸術は時を超えて愛されることでしょう。

そして、多くの人が特撮の為に小さな努力を少しずつ積み重ね続けてたその精神も、技術が変わっても伝わって行くでしょう。

デザイン(特撮技術)と芸術(造形)と人々の飽くなき努力の絶妙な調和がこの素晴らしい特撮を作り出しているのだと思いました。