4月14日は新潟のりゅーとぴあへ、アートミックスジャパンの催し物で、柳生新陰流兵法の演武を観てきました。
私自身、柳生新陰流兵法を16年やっていて、一度は宗家の組太刀を生で見てみたいと思っていました。
柳生宗家の組太刀を見るには、大体県外にまで足を伸ばさないと見ることができないので今回のイベントはチャンスでした。
会場はほぼ満席でした。パッと見ると剣術をやってそうな人は二、三人、ほとんどの人がアートミックスジャパンに他の催しを見たついでに来てみたという感じと思いました。
柳生新陰流だけでなく、剣術というものを知らない人がほとんどという感じです。
なぜそんな事が分かるかというと、剣術やってる人は大体雰囲気が違うんですよね。
ちょっと変わってそうな感じがあるんですよ。
普通の人じゃないっていうか、変わり者の雰囲気が漂ってるんですよね。
剣術やってる人は「あ〜…」っていうかもしれません。
宮本武蔵先生も何かの書の中で「剣の道をゆくものは、奇特な人間だ」みたいなことを言ってたとか言ってないとか…
話を戻すと
催しは全45分位で、内25分位は宗家によるスライドを使った講演で20分が宗家と門弟の方々による演武でした。
講演の内容はもう既に知っていることなので、新たな知識は得られませんでした。それどころか、物足りなさと内容について疑わしさを感じました。
確かに来場者は殆どが柳生新陰流を初めて知って、初めて観る人達なので、分かりやすく、取っ付きやすくする必要があろうかと思いますが、もう少し概念的な部分を細かく伝えなきゃならないんじゃないか?と思いました。
なぜその教えが大事なのか?なぜ時代が変わっても後世まで伝えられたのか?
なぜ時代が変わろうとも今後も大切に伝えていくべきなのか?現代人の我々にとってどういった価値があるのか?キチンと説明ができないといけないと思いましたね。
柳生新陰流の教えは次第に武士道や武道というものになっていくと説明があったけど、武士道や武道という言葉は近代になって出てきたもので、それらの言葉が使われるようになった時代は、流祖が伝えた教えが大分その時代に即したものに解釈されてしまっているので、武士道や武道などといったものの中から柳生新陰流を見出すのはひどく簡略化というか抽象化されたものになってると思うんですよ。
武士道の様なものは、その時代の治世者が我が世の安泰のために触れ回ったご都合主義の道徳だし、そこに流祖や石舟斎の教えをこじつけるのは無理があると思いました。
組太刀に関しては、まずもって刀法を「型」と表現するところに間違いがあると思ったし、実際の組太刀を見るに「あぁ型剣術になってるなぁ」と思いました。
刀法はそのまま実戦で使えるものでなければ正しくありません。だから型剣術なんていくらやったって上手くならないし、流祖や石舟斎先生や兵庫助先生や十兵衛先生が遣っていたものとは違うのです。稽古ではこう使うけど実戦ではこう使うなんて事しないでしょ?
合撃は悲惨でした。
互いに上段から打ち合うのですが、仕太刀(柳生を使う側)が打太刀(一般的には新当流)に克つんですけど、全然負けてるんですよ。打太刀が振り下ろした割と低い所で仕太刀の太刀が当たるので、仕太刀の太刀の上に打太刀の太刀が乗っちゃうんですよ。本当はもっと打太刀の太刀が高い所で克つんですけどね。あれでは完全に仕太刀が負けてる状態です。
来場者の中にいたであろう、数名の剣術家はみんなそう思ったに違いありません。あそこに疑問を感じない人は初心者だと思います。
兎にも角にも、宗家の役割は「柳生新陰流兵法」とその価値を弘流し、後世に伝えゆく事なのです。
今回のイベントにおいても、柳生新陰流が現代においても価値があり、後世に伝えて行くべき価値のあるものだって事を、初めて観る方々に認識してもらわなきゃいけないのに、そういったメッセージが全く伝わってこなく、ただ単に「昔から伝わるものをただやってますよ」っていう風にしか伝わらなかったという事がとても残念でした。
こんなんだから「武道」というと、やれ集中力が身につくだの、礼儀が身につくだの挨拶が出来るようになるだの、とってつけた様な事しか言えない人ばかりになるんですよ。
世の中には宗家以外で柳生新陰流をやっている人はたくさんいるけど、宗家の組太刀を観て残念に思う人が多くいるというのがよく分かりました。
兵法は仁と愛をもって他者との調和を醸し出すものであります。
剣を学ぶ事は心にも身体にも自在を得る事であります。
剣の道に出会う事、良い師匠に出会う事、これは天命だと我が師は言います。
天命を大事にしたいと思いました。
追記
剣術や兵法に関してものを書くと、大体何らかの兵法やってる人などが絡んでくるのですが、そういった方々と議論を始めると全くキリがないので、私の言い分を見て何か物申したい人は、どうかお構いなき様にお願いします。
「ふ〜ん…」程度に読んでください。
また、私も誰かが書いている記事など見つけても、一切絡みません。「ふ〜ん…」程度に読んでいます。
斬り合いはやらないに越した事はないのですから。